でたらめ山暮らし/ブログ版

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旅の思い出むかし話5 …そして東を目指す

 というわけで牧場の仕事は10日間の予定だったが、確か相棒の都合(学校かフェリーの日程だったような)で1日早く終わらせてもらうことになりました。
 ま、私は早くやめる理由がないんだけど、良いタイミングかな?と考えて一緒に出発することにしたわけです。


 ちなみに牧場の仕事って、生き物相手だから休日がないんですよね。
 だから家族全員で旅行した経験が一度もなくて「家を空けるわけにいかないから、結局は父ちゃんか爺ちゃんが留守番することになる」んだそうです(今は別の人が留守を預かる制度があるらしい)。 

 ところで子供たちと花火もして遊んだけど、主人から「打ち上げ花火だけはするなよ」と言われてました。
 なんでも牛が音におびえて翌日の搾乳量がてきめんに減るそうで、本当にデリケートな生き物なんですねぇ。

 その子供達も夏休みの間は家の仕事を手伝ってましたよ。
 特に中学生の長男はすでに仕事の知識や経験は相当なもんで、何より率先して働くから本当に感心します (^o^)
 だけど私が「将来は父ちゃんの跡を継ぐのかい?」って聞いたら「…うーん、わかんないなぁ」と複雑な顔で笑ってました。

 ある時主人から聞いた話ですが「家族でこれだけ働いても機械や飼料代とかでどんどん引かれてな、せいぜい(年収)400万ほどしか残らないんだよ。今みたいに猫の手を借りたい時期もあるが、これじゃまともな給料を払う余裕がないんだ」とのことでした。
 確かに育ち盛りの子供達はこれからさらに多額の出費があるだろうし、結局は都会でサラリーマンや公務員してた方が楽して高収入が得られるでしょうかねぇ。
 だけどもし経済的に十分恵まれた職業なら、あの兄ちゃんも胸を張って「うん、跡を継ぐよっ」と頷いたかもしれない…なんて思ったりもしました。

 ま、いい加減で自分勝手な私なんかが一生続けられるほど楽な仕事じゃないと、自分なりにわかりましたよ。
 だけど我が家の食生活に牛乳はもちろん、バターにチーズは必需品です。
 それらは無機質な工業製品と違い「牛と人間が生きる生活」の中から生み出されるもんだと、この経験から知ったわけです…。


 ところで意識変化したことのひとつに「女性を見る目」があるかな。
 とにかく奥さんは凄い働き者で、大型機械や重機まで操縦するし男と全く同じ仕事をしてましたよ~。
 さらに3人の子供達を世話しながら食事を含めた家事全般、そして夜遅くまで洗濯(半端じゃない量だっ!)をしてたからプライベートな時間など全然ない感じです。
 で、そのことについて聞いてみると「私の実家も牛屋でさ、二十歳でここの嫁に来たんだ。…子供の頃から親を見て手伝ってたから、これが普通だと思ってるよ~」との返事に衝撃を受けました。
 私はあれ以来、表面だけを飾ってる女性よりも、体を動かして一所懸命働く人を美しいと思うようになりましたねぇ…。
 
 そういや奥さん手づくりの「牛乳豆腐(チーズの一種?)」は美味しかったよなぁ…。
 残念ながら店じゃ売ってないけど、またいつか食べてみたいものです (^_^) 


 というわけで9日間のバイト(研修期間?)を終え、出発の朝になりました。
 稼ぎの金額は寂しかったが、それでも1日多い10日分の手当を支給してくれたんで(どれほど役に立てたかはともかく)一応我々の働く姿勢は評価してくれたと解釈することにしましょう (^_^)
 
 ま、考えてみれば結構なごちそうもしてくれたし、主人は暇を見て私のカブ号の改造(積載量アップ)に協力してくれたりと、いろいろ良くしてもらいましたよねぇ。
 それにわずか9日の間に牛舎の仕事だけでなく畑仕事や牛の出産や脱走騒ぎ等々、内容の濃い経験ができたのはきっと運が良かったんだろうなぁと、今では思ってますよ。
 話じゃ「お前らは一番忙しい時に来たけど、いつもなら牛舎の仕事と雑用くらいでたっぷり昼寝する余裕があるんだ。もしまた来るなら今度は暇な時期にしろ」とのことでした。
 

 最後に主人が「記念にサイロのてっぺんを見てこいっ」と強く言うんで、仕方なく登ってみましたよ(高所恐怖症なんだけどな)。
 …で、そこに見えたのは本当に素晴らしい景色で、地平線を望むほど広大で北海道を実感する平野の中に私がいました。
 小さく見えるのはこれから向かう道東の山々と、ここへ来るきっかけになった一番近い地方都市でしたね。
 そして「短い間だったが、これは自分が働いて生活した土地なんだなぁ~」って名残惜しいような気持ちもわいてきて、「…ま、やって良かったんだろうなっ」と思ってみたわけです。

 
 そして半月の間、情けない境遇を共に過ごした相棒とも、ここでお別れです…。
 なぜかお互いの連絡先も聞かなかったし彼とはそれっきりになりましたが、きっとどこかで元気にやってることでしょう (^o^)


 

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